先日、一般社団法人ファミリービジネスアドバイザー協会(FBAA)設立5周年記念講演について、その内容について紹介します。この講演において、ファミリービジネスの名著『オーナー経営の存続と継承』の著者であられるアイヴァン・ランズバーク氏とケリン・E・ガーシック氏が講演されました。

セッション1 ファミリービジネスが直面する世界的な課題(ケリン・E・ガーシック氏)

ケリン・E・ガーシック氏が、ファミリービジネスの世界的な課題、特にファミリービジネスガバナンスと永続性に焦点を当てた基調講演を行われました。

主な課題としては、以下の3点をあげられました。

  1. 富を創造した世代の高齢化
  2. 前例をみないグローバル企業の台頭
  3. 「世代間ギャップ」と言われる文化のグローバルな拡散

2.の課題においては、これまで各国で守られてきたニッチな市場が破壊され、規模拡大を志向しなければ企業成長(維持)が難しくなってきていると強く主張されました。これは、上場企業などに起こっていたM&Aなどによる企業規模の拡大が、比較的中小規模の企業規模であるファミリービジネスにも求められるようになっているようです。

また、ファミリービジネス特有の課題としては、3.となりますが、海外経験の豊富な後継者が自国になじみにくくなっている、伝統的な価値観(親の苦労等)を失うことへの創業者の恐れについて指摘されました。

また、事業承継計画を阻害する要因についても触れられました。

  1. 創業者が退陣を拒む
  2. 後継者側で承継の準備が整っていない
  3. 関係者(家族を含む)が変化を恐れている

特に、1.の対策としては、「創業者としての地位が失われることへのフォローとして、創業者に敬意と感謝の気持ちを示しつつ、業界団体等への新たな地位などを提供することによって、創業者の地位を守る必要がある」と指摘されました。

最後に、全体的な事業承継対策として、後継者候補について、後継者候補を広げることが必要とも言われ、これまで後継者候補でなかった女性、縁戚、養子縁組にも広げるべきと説明されました。あと、事業承継計画についても、より短いスパンで計画を考えること、後継者に対して、拘束、制約を減らして、協働やリーダーシップを発揮する機会を増やすべきだと説明されました。

これまで後継者には外釜の飯を食べさせるべき(銀行や取引先での修行)とのお話も多くありますが、よりスムーズに後継者に事業を承継していくには、早い段階から後継者にファミリービジネスに関わられる機会を持つべきで、さらに意思決定のプロセスも共有し、仮に意思決定が失敗してもそれを責めずに、より多くの経験をさせることが重要であると指摘されたことは大きな気付きにもなりました。

セッション2 ファミリービジネスにおける女性の役割の進化(パネルディスカッション)

旅行新聞にその内容が取り上げられています。

セッション内では、大きなトレンドとして、創業者(後継者)世代の女性の役割として、「女性の責務として、家庭、ビジネスの双方において、女性は家族の面倒を見て、家族の調和を維持するもの」としてあったものが、現代では「女性もキャリアと選択肢を求めるようになっている」と指摘されました。そのため、子供にも「あなたが跡取りなんだから」ということは言わないようになり、何かを強制するわけではないという家庭が多くなっているとのことです。確かに、そのような風潮が強いように思います。

また、ビジネスに関わる女性特有の問題として、他の兄弟には株式を譲渡するのに、女性である自分には譲渡されない(フィリピン)、管理職でありながら自分の執務室が提供されない(アメリカ)、家庭を選ぶのか、仕事を選ぶのかの対立(フィリピン)など世界での問題も共有されました。確かに日本でも同じような現象があると思います。

抜本的な改善策は難しいと思うのですが、解決策として示唆されたのは以下のような内容です。

  1. 家庭とビジネス双方でこれまでの固定概念の打破が必要(柔軟的な考えを持つこと)
  2. 誰かに頼れる環境を持つこと(奥様の実家の近くに住むことで子育てを助けてもらうとか)
  3. 女性を株主とすることでリーダーシップを発揮できる体制を整えること

いずれにせよ、伝統的な価値観もあり、すぐに解決できることではないわけですが、政府の女性活用なども参考に家族やビジネスのなかで女性の活躍について会話を始めることが大切だと思います。

セクション3 世代交代のマネジメント事例紹介(アイヴァン・ランズバーク氏)

冒頭に指摘されたことは、「事業承継(世代交代)の残された猶予は、どんどん短くなっており、サプライズはなく、プロセスとして計画的に進めるべき」、もう1つは、「子供に対して間違ったシグナルを送っているために、子供が家業に入らなくなった、距離をおくようになった」ということでした。どちらも本質をついており、まさにその通りだと思います。

セッション内では、後継者選定のプロセスが紹介され、後継者について、たった1人ではなく、複数の後継者を想定すべきと言われて、さらに外部からの探索も進めるべきと言います。また、後継者の評価の際には、ビジネス能力だけではなく、ファミリーやオーナーシップも理解する能力についても検討すべきと言及されました。確かに、ファミリービジネスでは重要なことだと思います。

後継者の資質について、基本的にはその時点で理想的な後継者がおらず、最低のことができる候補はいるので、その候補者を時間をかけて教育することが基本的な視座だと言われています。確かに、そのような視座を持っていれば、創業者から「あいつはまだ一人前でないから譲らない」という発想にはならないと思います。ただ、最低のこともできない、また、教育の時間がないとなると、真剣に外部から人材を探す他ありません。

あと、現実問題としては難しいことですが、ワンマン創業者の後継者ほど、ワンマン創業者1人で選ぶのではなく、社外取締役、ノンファミリー幹部、コンサルタントなどの外部目線の意見を仰いだ方が良いとのことでした。

その他、各国の事業承継における事例も交えながら、事業承継に関する様々な問題と対策方法などについて、説明され、討議されました。非常に密度の濃い講演でありました。

みなさまの活動にも是非お役立て頂ければと思います。