今回のレポートは、弊社のファミリービジネスマネジメントコンサルタント®養成講座の開講に合わせて、ファミリービジネスに対するアドバイザーについてのこれまでどのような研究がされてきたのか、ストライク(2012)の論文を紹介したい。具体的には、1983年から2011年までの文献を対象に、3つの問いに答えている。

まず、どのような人がファミリービジネスにアドバイスをするのかである。
2つめに、アドバイザーは、どのようにアドバイスをするのかである。
3つめに、そもそもアドバイスにはどのような価値があるのかという問いである。

これらの問いに答えることで、ファミリービジネスのアドバイザーの重要性について考えていきたい。

アドバイザーのタイプ(公式、非公式、ファミリービジネスの重役)

ファミリービジネスのアドバイスの文献をレビューするにあたって、1980年から2011年のアカデミックジャーナルを対象とした。まず、どのような人がファミリービジネスにアドバイスをするのかについて議論していきたい。アドバイザーのタイプの一般的な分類として、公式のアドバイザー、非公式のアドバイザー、ファミリービジネスの重役に分けられる。まず、公式アドバイザーは、家族や企業に雇用されており、会社の外部もしくは内部のポジションに属する。アドバイスやサポートをするために様々なバックグラウンドを持っており、多くのサービスを提供することができる。タギウリ&デイビス(1982)は、スリーサークルモデルを提唱し、アドバイザーは、3つのシステムのうち1つ以上の仕事をすることを示した(図を参照)。

スリーサークルモデルでは、オーナーシップ、家族、ビジネスの3つのサークルがあり、ファミリービジネスのアドバイザーは1つ以上の役割を持つ。具体的には、オーナーシップは、プライベートバンカー、エステート(資産)プランナー、タックスロイヤー、コーポレート・ファイナンスアドバイザー、投資アドバイザーである。家族としては、家族のセラピスト、心理学者、精神病医、個人的な指導者がいる。ビジネスとしては、マネジメントコンサルタント、会計士、法人顧問弁護士、法人銀行、コンサルティングのスペシャリスト、相談役、取締役員がいる。

公式アドバイザーには2つのメインタイプとして、特定分野のエキスパートとプロセスコンサルタントがある。特定分野のエキスパートは、税法や投資のようなスリーサークルモデルのうち特定のシステムの1つでサービスを提供する。この問題は、その効果が会社と家族の両方に関わり、問題が変化し、その変化に対応するための次のサービスが提供できないことである。一方、プロセスコンサルタントは、ビジネス・家族自身の発展や実践するための家族間での信頼をつくるプロセスに焦点を当てており、家族や会社やオーナーシップの間で仕事をする。対応すべき問題は変化し、経時的であり次世代でも新たな問題が生じ、提供するサービスも変化していく。特定分野のエキスパートもプロセスコンサルタントもアドバイザーは、家族システムの中で知らされた専門家として認識される。

次に、非公式のアドバイザーは、家族やファミリービジネスに公式的には従事しない。家族の内部もしくは外部で、信頼の媒介者(trust catalysts)、配偶者、メンターが含まれる。信頼の媒介者とは、世代間の信頼の橋渡しをする人である。アドバイスやサポートや共感をし、一方の信頼のために家族を鼓舞する役割がある。

3つめのアドバイザーのタイプであるファミリービジネスの重役は、価値のあるアドバイスの源泉である。ファミリービジネスの重役は、取締役員もしくは相談役を含んでいる。取締役員は、法的立場、投票権を持っており、公式の監督である一方で、相談役は、そのような権限を持っていない。さらに、効果的なアドバイザーの能力として、これまでの研究では、経験、専門的なスキル、対人能力があげられている。それらの能力は法律、ファイナンス、マネジメント、行動科学の分野で示されている。

アドバイザーのアドバイスの方法

次に、アドバイザーは、どのようにアドバイスをするのかということを議論していく。アドバイザーがファミリービジネスに介入するプロセスは、通常の場合、契約、アセスメント、計画変更と実行、評価とメンテナンスの反復フェーズである。また、アドバイスのモデルとして様々な理論で行われている。モデルの多くは、ボーエンの家族システム理論や、組織開発、システム理論、家族セラピー理論、またはそれらの組み合わせに基づいている。ボーエンの家族システム理論は、心理学の分野で研究されており、人間の行動に基づいており、家族を複雑な相互作用を持つ感情的な単位として扱っている。具体的には、家族は、相互の注意、承認、サポートを求める。組織開発は、変更のプロセスで家族を参加させることに基づいている。メンバーのコミュニケーションの方法、意思決定の方法、変化のあり方に焦点をあてている。システム理論は、スリーサークルモデルから導かれ、異なるシステムの交わりが原因であるコンフリクトを扱っている。システム理論モデルは、関連するサークルの問題に注目すると同時に、システム全体のダイナミクスを考慮しながら、その必要性を強調している。さらに、3つのサークルのそれぞれの複雑さは、家族や会社が異なる発達段階、構造、役割、関係、必要性の変化を経るにともなって増加すると考えられている。最後に、家族セラピー理論では、家族の関係に焦点を当てた行動の健康に注目している。家族セラピーは、自己(個人)、システム(家族)、社会(ファミリービジネス)の3つの側面を考慮している。

アドバイスの成果

最後に、アドバイスにはどのような価値があるのかについて議論していく。アドバイスの成果は、ビジネスの成果と家族の成果に分けられる。まず、ビジネスの成果は、アドバイザーがいることによって、ファミリービジネスの意思決定の質の向上することや、計画の幅を増やすこと、多様性が生まれること、知識の幅広くなること、企業パフォーマンスの改善がされることなどのポジティブな結果が得られることが明らかにされている。一方で、家族の成果は、家族の関係の質が尺度として挙げられている。アドバイスの結果、家族が団結し、協力的に働き、コンフリクトが少なくなるという研究もある。また、アドバイザーを雇用することで、家族の能力やコンフリクトのマネジメント能力が向上する傾向にあることも示唆されている。

以上のように、今回の研究では、ファミリービジネスのアドバイザーのこれまでの研究をまとめた。ファミリービジネスに関わるアドバイザーは様々なバックグランドを持った方たちがいることもあり、統一的にこのようなアドバイスをしたら良いということはない。しかし、アドバイザーを入れたファミリービジネスにおいては、ビジネス面及び家族面でポジティブな結果を得られていることが分かる。また、経営、所有、家族面をトータルにアドバイスできるアドバイザーについても注目されている。
弊社ではそのようなアドバイザーをファミリービジネスマネジメントコンサルタント®と称しているが、このようなファミリービジネスの専門家が増え、ファミリービジネスの永続的な発展に寄与できるように貢献していきたいと思っている。

是非、ファミリービジネスのオーナーには、アドバイザーの有効性を理解し、信頼できるファミリービジネスのアドバイザーの支援を仰いではいかがでしょうか。