創業者社長と後継者社長の経営スタイルの違い

ファミリービジネスを経営する上で、どのタイミングで後継者へと事業を承継すればいいかについて、創業者にとっての悩みの種だろう。今回の調査レポートでは、創業者と後継者による経営スタイルについて、主に企業の成長と利益に焦点をあて、その違いを明らかにしたい。このレポートを通じ、どのタイミングで後継者に事業承継すべきか、そのヒントを提示したい。

本研究では、創業者による経営と後継者による経営スタイルの違いについて、業績の観点から比較する。先行研究ではこれまで、創業者によってビジネスを経営する方が、企業の成長スピードが速く、また、創業者による積極的な投資により、ファミリービジネスの業績も向上すると考えられてきた。しかしながら本研究では、創業者によって経営することでビジネスの規模は大きくなる一方で、後継者によって経営する場合の方が、より高い利益が見込めることが明らかとなった。これは創業者によって市場シェアや市場における地位を確立したのち、後継者にその仕事を譲ることによって、より後継者は業績向上に集中すること、すなわち起業家ではなく経営者としての役割を全うすることが可能となるからである。以下、詳述したい。

ファミリービジネスにおける所有については、ビジネスの所有者と労働者の間の利益の違いや、それによって生じるコンフリクトに着目した研究が蓄積してきた。しかしながら、それらの研究においては、ビジネスの所有者について詳しく検討されてきたわけではない。換言すれば、ビジネスの所有者は創業者なのか、後継者なのか、それともファミリーとは別のメンバーなのか、意識されてこなかったのである。以上を踏まえ、本研究ではビジネスを所有するオーナーの特徴に注目し、巨大な民間企業における業績の違いについて、定量分析に基づき検討している。

本研究では、調査対象として1987年の10月21日公刊のニューズウィークに掲載されたファミリービジネスを対象に、創業者によって経営される企業90社と、後継者によって経営される企業57社を選定。当該企業の1986年から1988年までの財務データを用いて統計的分析を行った。経営者によって経営される企業の売上の平均は12億ドルであり、後継者によって経営される企業の売上の平均は15億ドルであった。

上述の企業を対象とする分析の結果、以下の5点が明らかとなった。

第1に、ビジネスの成長である。創業者によって経営される企業においては、売上高が大きく成長していたが、後継者によって経営される企業においては、その成長がゆったりとしたものであったことが示された。

第2に、ビジネスの利益についてである。後継者によって経営されている企業の方が、創業者によって経営されている企業やファミリーメンバー外によって経営されている企業よりも、高い売上高利益率や総資産利益率を上げていることが明らかとなった。

第3に、ビジネスの効率である。創業者によって経営されている企業の方が、売上高や従業員あたりのキャッシュフローは高いものの、後継者によって経営される企業の方が、総資産回転率が高かった。すなわち、後継者によって経営されることで、より資産が効率的に活用されていたことが示された。

第4に、ビジネスの財務状況についてである。ビジネスのオーナーを問わず、ファミリービジネスにおいては、非ファミリービジネスと比較して、債務が少ないことが明らかとなった。

第5に、ビジネスの価値についてである。財務状況と同様に、ファミリービジネスは非ファミリービジネスよりも、株価が高いことが明らかとなった。

後継者による経営によって、より経営は洗練される。

以上を踏まえ、分析結果の考察を行う。まず、分析を通じて、創業者によって経営されるよりも、後継者によって経営されるファミリービジネスの方が、高い利益を上げていることが明らかとなった。その一方で、後継者によって経営されるよりも、創業者によって経営される方が、ビジネスの成長が速いことが明らかとなった。本研究では、この結果を、企業のライフサイクルの観点から検討したい。創業者によって経営されている企業は、まさに創業者自身によって起業し、自らによる投資や技術的な成長によって売上を上げている状況である。それゆえ、マネジメントが洗練されているとは言い難いものの、大きな成長が見込める。その一方で、後継者によって経営されている企業は、上述の創業者による投資や成長を踏まえた上での経営となる。よって、自社のアイデンティティが創業当時よりも明確であるため、有用な投資が可能となるだろう。また、経営を引き継ぐことで、先代よりも資産の合理的な活用が可能になるだろう。よって、より経営のプロフェッショナルとして、高い利益を上げることが可能となるのである。すなわち、創業者は技術的な特異点やビジネスを始める背景などを持ち合わせる起業家である一方で、後継者はビジネスを維持させる必要があるため、経営者としての側面を強く持つため、本研究が示す結果となったのである。

以上を踏まえれば、ビジネスが安定した軌道に乗り、企業規模や売上の成長がひと段落した段階において、後継者への事業承継を考えることが適切であるといえる。なぜなら、そのような段階においては、自社において求められるものは、自身の起業家としての役割ではなく、経営のプロフェッショナルとして、高い利益をあげていくことであるからである。さらに、そのタイミングを見越し、これまで提示してきたレポートが示すような、経営の専門家として教育を実施すれば、さらに事業承継を通じたビジネス成長の確度は高くなるだろう。

(出典) McConaughy, D. L., & Phillips, G. M. (1999). Founders versus descendants: The profitability, efficiency, growth characteristics and financing in large, public, founding-family-controlled firms. Family Business Review, 12(2), 123-131.