ファミリービジネスをする上で直面する大きな問題は、後継者におけるリーダーシップ開発である。これまでのファミリービジネスにおける後継者の研究では、リーダーシップの能力開発のために外から専門的な知識を得ることや、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)を通じて後継者がリーダーシップを学ぶものがほとんどであった。ゆえに、他の方法に関しては議論されてこなかった。今回紹介する研究は、サルバト&コルベッタ(2013)の論文である。この研究では、アドバイザーが後継者に対してリーダーシップ開発をした詳細な記述がなされている。

繰り返しになるが、これまでの後継者の文献は、後継者のリーダーシップスキルの発展に影響する要因を示している。しかし、このプロセスで示されている役割の専門家のアドバイザーは、よく理解されていない。本研究では、アドバイザーが後継者のリーダーシップの構造をどのように促進するのかのセオリーを示すために4つのアドバイザーに向けられたリーダーシップの開発の詳細な記述を示す。データの収集と分析をするために、内部者と外部者のアプローチを採用して、アドバイザーによる変革型リーダーシップの前提、すなわち、後継者のリーダーシップの発展を支援するアドバイザーによるリーダーシップが、成功のプロセスへの動くことが重要であることを明らかにした。

後継者のリーダーシップの能力を開発するために必要なこと

ファミリービジネスに直面している主要な問題は、世代にまたがる家族のリーダーシップの能力を確保するために能力開発をすることであるが、どのように後継者のリーダーシップが最も発展されるのかを体系的に理解することは限界がある。後継者の文献は、後継者のビジネスの知識や技術的な能力を開発すること、ファミリービジネスの外の専門的な経験や、OJTを通したものが典型的である。さらに、後継者のリーダーシップの開発は、家族や会社内での正当性を発展させる後継者や、リーダーシップの性質を構築するよりも、権力やルールを移行することとして主に解釈されている。結果として、どのように経営している家族やファミリービジネスの外部の重要な行為者(アドバイザー)との関係を含むような、ファミリービジネスの特徴である複雑な関係内で後継者がどのようにリーダーシップを発展・構築するのかは比較的狭い理解しかなされていない。既存研究では、広いプロセスとしてリーダーシップを概念化しており、関係している複数の個人が組織のような集団内で埋め込まれた個人間で相互の影響をしながら活動に従事する。したがって、個人のリーダーシップが統合している3つのレベル(個人、二者関係、集団)の構造が示されている。このフレームワーク内で、役割は外で示され、家族でない専門家は、どのように後継者がリーダーシップを発展したり構築したりするのかを理解していく。これまでの後継者やリーダーシップ開発の部分的なアプローチになる不満足な結果を受け、本研究では、アドバイザー志向の後継者のリーダーシップ開発のグラウンデッドモデルを示す。結論を先に言うと、分析の成果で明らかにされたことは、高い適切なアドバイスの役割への理論的・実践的知見を示すアドバイザーを支援するリーダーシップ開発のプロセスモデルである。特に、分析データは、アドバイザーが変革型リーダーシップの役割に与えることで後継者のリーダーシップの開発に重要な貢献をしていることを明らかにした

本研究の理論的前提を説明する。各世代を通して家族のリーダーシップの能力を保証することは、ファミリービジネスが直面している主要な問題の1つである。ファミリービジネスにおけるリーダーシップの移行は、困難である。なぜなら、経営をしている家族は才能のある個人の保有には限界があり、さらに、複雑な社会的つながりや経営している家族内外の関係が感情的要因で関係している特徴があるからである。既存のファミリービジネスの研究では、現行のリーダーから後継者のメンバーにリーダーシップの役割の移行するために、後継者を示すことでこの複雑さを軽視する傾向にある。一方で、リーダーシップの研究では、リーダーシップが組織内外で行為者の広いグループとの接合を通して徐々に構築される社会的プロセスとして後継者の見方を示している。本研究では、アドバイザーのような外部の行為者の役割と、後継者のリーダーシップの構造を導く2つのアプローチを別々に議論する。

これまでのリーダーシップ開発に関する研究変遷

まず、ファミリービジネスの文献におけるリーダーシップの役割としての後継者の変遷を述べる。現在のファミリービジネスの文献では、後継者のプロセスは、リーダーシップやオーナーシップ、知識が移行されることによる活動、出来事、組織のメカニズムのまとまりとして解釈されている。ファミリービジネスの後継者は、ファミリービジネスの後継者のメンバーと創業者や現在のマネジメントの置き換えとして理解されている。それらのステップは、後継者のリーダーになるために強いコミットメントが前提とされており、したがって、リーダーシップがファミリービジネス内で後継者や地位の移行によって自動的に生じるとされている。

一方で、リーダーシップ役割からリーダーシップ構造プロセスへの変化を述べると、リーダーシップの役割の変化として後継者を示すことは、解決されていない重要な問題が残っている。近年の研究では、リーダーシップは、公式の役割や階層的構造の相互に影響する独立したプロセスであり、組織のメンバー間で広められる、事実について同意する発展をしている。それらの理論は、ファミリービジネスとしてのリーダーシップの開発の研究ではないが、重要な知見を示している。リーダーシップの役割は、個人、二者関係、集団の3つのレベルで構築されている。つまり、リーダーシップの構造プロセスの展開が、次世代リーダー、次世代フォロワー、以前のフォロワーとしての個人のアイデンティティが、個人の思考、影響、モチベーション、行動の重要な原動力の構造が重要である。リーダーシップ構造のプロセスが不可欠な社会であるということは、つまり、直接的な後継者プロセスに関係させる経営している家族だけではなく、全ての家族と家族でない会社のメンバー、重要な外部の構成員も含まれている。

新たな視点としてのアドバイザーによる後継者のリーダーシップ能力の開発

本研究は、質的調査を行なっている。関心のある現象だけでなく他の外的なバリエーションを示すために、3つの理論的に適切な次元をもとに同質的な4つのケースを選択している。まず、対象となる4つのファミリービジネスは、主要ヨーロッパに位置する。2つめに、全てのアドバイザーや後継者は男であるため、ジェンダーに差がない。3つめは、トップマネジメント(CEO)やガバナンス(社長)の地位に成長する後継者へのリーダーシップと開発のプロセスのみを選択している。

分析結果より、データ分析、文献、記述による比較プロセスでは、後継者のリーダーシップ構造のグラウンデッドモデルとなった。このモデル内で、アドバイザーは、後継者のリーダーシップ構造プロセスに影響する構築する力のバランスを保ったり調和したりする主な役割があった。その役割とは、アドバイザーは、後継者のリーダーシップの役割を構築することやリーダーシップへの認知をさせるための行動を示した。さらに、後継者のメンバーは、リーダーシップを問うことやリーダーシップの役割を主張することによって後継者の役割への恐れを保つ。変革型リーダーシップの役割によると、現在の世代のリーダーと後継者で共有され、アドバイザーは、後継者に役割モデルを示し、後継者のリーダーシップを生み、最終的に後継者の卓越したリーダーシップをさらに確かなものにするために、変革型リーダーシップの役割を抑えた。

 

下の図にもあるように、アドバイザーの変革型リーダーシップによる支援された後継者のリーダーシップ構造には、大きく3つのポイントがある。

 

①後継者のリーダーシップ構築へのアドバイザーの支援

アドバイザーは、2つの補完的な活動によって後継者のリーダーシップの役割を構築することに貢献する。まず、アドバイザーは、後継者のリーダーシップ能力を促進し、育成し、強化する(役割構築)。 第2に、アドバイザーは、彼ら自身と他の後継者のメンバーのためにフォロワーの役割を主張することによって、後継者のリーダーシップの役割を明確にすることを目的とした活動を行う(リーダーシップ付与)。

②家族が主導する後継者のリーダーシップの構造への恐れ

後継者のリーダーシップの構造へのポジティブな支援は、後継者として選ばれない後継者のメンバーによる恐れのため反対される。例えば、後継者の選択に同意しない創業者のメンバーがいる。これらのようなコンフリクトのある家族は、後継者のリーダーシップへの2つの恐れをつくる。後継者のリーダーシップの役割と、リーダーシップのポジションである。

③アドバイザーの変革型リーダーシップ

後継者のリーダーシップ開発への支援(役割構築とリーダーシップの認可)と恐怖(役割探求とリーダーシップの主張)は、後継者のリーダーシップ構築のプロセスにおける対照的な影響を決定する。分析した4つのケースでは、アドバイザーは、明確に受け取られた後継者のリーダーシップの役割を達成することに向けて反対の力とバランスをとる不可欠な役割を示した。分析データは、明示的な変革型リーダーシップの役割を果たすことで、アドバイザーは、後継者に役割モデルとして行動することで、後継者のリーダーシップを支持すること、後継者の達成されたリーダーシップを確かめるためにアドバイザーのタスクを控えることで、反対の力のバランスをとることができる。

まとめると、本研究では、アドバイザーがどのように関係的プロセスに影響を与えるかという問題に取り組んだ。後継者が自身と向き合い、家族のビジネスリーダーとして他人に見られるようになる。焦点を当てたのは、メンバーのリーダーシップ構築プロセスにおけるアドバイザーの役割にあった。世代別の家族の4つのリーダーシップ開発プロセスの帰納的分析から、アドバイザーは、後継者のリーダーシップに影響を及ぼしている促進要因と、対照的な力のバランスをとる上で重要な役割を果たすことが明らかになった。具体的には、現在のリーダーおよび後継者と共有される変革型リーダーシップの役割を担うことにより、アドバイザーは後継者のリーダーシップが関与している行為者によって徐々に明らかになり、受け入れられるプロセスを促進するアドバイザーを支持する変革型リーダーシップの新しいグラウンデッドモデルを図に示した。これは、ファミリービジネスの継承に関する研究とリーダーシップ構築プロセスに関する知識の両方に新たな付加価値がある。

今回紹介した研究では、後継者メンバーのリーダーシップの性質の発展における外部のアドバイザーの役割を調査したが、ファミリービジネスの後継者における現象は見過ごされてきた。後継者のリーダーシップの構造の4つの比較ケースの分析は、現在の家族のリーダーに外部の経験や知識を移行する点で、結果として受け取った後継者のリーダーシップの知見を確認した。アドバイザーと後継者の相互作用の密接な観察は、これまでの家族と後継者自身の融合において強いリーダーシップの性質を共創するようなアドバイザーによって機能する不可欠な役割を示した。この役割の後継者のリーダーが直面している特定の課題の公式の訓練やコンサルティングは明らかにはされていない。後継者のリーダーシップを開発したり強めたりするためには、アドバイザーは、社長や役員として、もしくは適切なファミリービジネスのイニシアチブをとる戦略的なコンサルタントとしてファミリービジネス内でリーダーシップの役割を一時的に与える必要がある。以上より、具体的なアドバイザーの取り組みに関しては今後の研究の余地がありながらも、後継者のリーダーシップ開発のためには、第三者的なアドバイザーが大きな役割を担うことが期待されるだろう。