ファミリービジネスの経営において、家族(ファミリー)がどの程度マネジメントに関与すべきなのかを考えることは重要なことである。特に、これから事業を発展させようという時期においては、株主やステークホルダーとの関係が肝要になる。今回は、リアンら(2014)の研究をもとに、家族の所有と経営がファミリービジネスの業績にどのような影響を与えるかを考察していきたい。

この研究の結論は、過度の家族(ファミリー)によるマネジメントは、家族への配当の可能性が増し、家族以外の大株主、いわゆる家族以外の取締役や国内銀行の利益が抑えられ、企業の価値の決定は家族以外の大株主がするため、企業の新規公開株後の業績へ負の影響を持つということである。

まず、前提となる論理を説明していく。ファミリービジネスにおいて、ビジネスの発展のために新規公開株を受け取った後は、外部のステークホルダーからの圧力をかけられる。この障害を乗り越えるために、ファミリービジネスは、家族以外のマネジャーにマネジメントの権利を与えることがある。しかしながら、専門化の圧力があるにも関わらず、重要な新興国市場における多くの企業は未だに創業者の家族によって管理されている。

また、組織ライフサイクルに基づくと、新規公開株は、企業の発展だけでなく、企業のコーポレート・ガバナンスの変化ももたらす。コーポレート・ガバナンスの研究では、創業者の家族は、新規公開株後であっても、専門化することを抵抗する傾向にある。さらに、ファミリービジネスを管理している家族は、家族以外の管理にガバナンスのシステムが変わるため、ファミリービジネスにおける決定は、外部リソースの企業のニーズも加味して決定される。

仮説1:新興国市場における新規公開株以降のファミリービジネスにおける家族の管理範囲が増す場合、ファミリービジネスの業績に対して負の影響を与える。

新興国市場における公的に記録されたファミリービジネスは、多くが家族が所有したり、家族が管理したりしている。エージェンシー理論により、所有と経営の結合は、情報の非対称性と管理の私用に関するエージェンシー問題を引き起こす恐れを減らすだろう。しかしながら、有効なガバナンスの制度の不足によって、経営している家族と家族以外の株主のコンフリクトが生じることが既存研究で明らかにされている。また、ファミリービジネスは、外的リソース(金融的、人的、社会的資本)にアクセスするため、家族以外の投資家に対してより透明なガバナンスが求められる。

つまり、ファミリービジネスを管理している家族による資本投資は、新興国市場の業績に正の関係があるが、新規公開株後の外部リソースのための企業の特定のニーズ次第で、正の影響が徐々に減り、所有権の集中が生じると負の関係になり、家族の管理が増える。

仮説2:家族以外の取締役が保有する株式は、新興国市場における新規公開株後のファミリービジネスの業績に正の効果を持つ。

家族以外の取締役は、ファミリービジネスでは手に入らないようなスキルや専門的なアドバイスや知識、コネクションのような外的なリソースへのアクセスを提供してくれる。ただ、ファミリービジネスにおける家族は、家族以外の取締役に対して、コーポレート・ガバナンスの点で消極的になるのではないかと懐疑的な場合がある。

既存研究によると、家族以外の取締役メンバーは株主の配当を守ることに用心深くなる傾向にあり、ファミリービジネスの持続的な発展を支援するためのリソースをより開放的にする。

仮説3:国内銀行が保有する株式は、新興国市場における新規公開株後のファミリービジネスの業績に正の影響を持つ。

クレアセンら(2002)によると、ファミリービジネスを管理している家族に加えて、銀行合併はアジアの新興国市場におけるコーポレート・ガバナンスのもう1つの重要な特徴である。銀行は、余剰資本の保有者と金融資本が必要な人の構造的な媒介効果として重要な役割を果たす。しかしながら、新興国市場において、信用の確認をすることへの基本的な基準の不足があるため、銀行は企業が契約を違反した場合、債権を引き受けるために必要な情報が不足している。よって、新興国市場において、銀行は企業にするガバナンスの役割を含んでいる。

株主の銀行の規模が大きい場合、株式の早期の売却が困難であるため、長期間の配当の保持が強いられる。この場合、投資されたファミリービジネスを管理するために銀行には大きなインセンティブがあり、銀行が投資の見返りを受ける。さらに、実際の株式保持は、投資されたファミリービジネスにおいて銀行が有効な投票権を持ち、取締役によって、有効なガバナンスに従事するための権力や情報を保持する。

仮説4a:家族以外の取締役と家族による所有権の相互作用は、新興国市場における新規公開株後のファミリービジネスへ負の効果を持つ。

ファミリービジネスがコーポレート・ガバナンスの透明性や説明責任を保証するための株式公開をすることは、最も重要な問題の1つである。ファミリービジネスの新規公開株後の発展の障害を乗り越えるために、家族以外のステークホルダーは、専門化のマネジメントを行わせるために、圧力をかけるだろう。家族以外の株主、すなわち、家族以外の取締役や国内銀行は、投資を抑えることで、ファミリービジネスの企業価値に負の影響をもたらす。

仮説4b:国内銀行の所有権と家族との相互作用は、新興国市場における新規公開株後のファミリービジネスの業績に負の効果を持つ。

さらに、金融投資において、国内銀行は、ファミリービジネスの拡大を支援するリソースの提供もする。特に、ほとんどの新興国市場の国内銀行は、地方の政府に合併させられる。そのような合併は、ネットワークリソースにアクセスする場合、投資されたファミリービジネスに有利になる。例えば、台湾の中央銀行による統計的リリースによると、台湾の5大国内銀行のうち3つは、完全に国有で、2つは部分的に国有である。したがって、銀行の株主を通して、ファミリービジネスは、他の国有の企業と政治的につながってしまう。これは、ファミリービジネスのさらなるリソースへの所与のアクセスを助け、所与の産業でのネットワークのポジションを固定化する。しかしながら、銀行の投資の撤退がリソースの優位に負の影響を持ち、部分的にリソースが必要な企業に害がある場合がある。

仮説5a:家族以外のマネジャーの出現は、新興国市場における新規公開後のファミリービジネスの業績にポジティブな影響を持つ。

ファミリービジネスを管理している企業のプライベートな配当を保持するために、管理している家族は、ガバナンスの有効性を高めるためのコーポレート・ガバナンスシステムを再形成し、管理している家族の私用を抑える。

仮説5b:大株主(管理している家族、家族以外の取締役、国内銀行)に所有されている株は、新興国市場における家族以外のマネジャーの出現と新規公開株後のファミリービジネスの業績の関係をネガティブに調整する。

マネジメントの専門化は、プリンシパル―プリンシパルの配当のコンフリクトを解決するが、コーポレート・ガバナンスのプリンシパル―エージェント問題を同時に悪化させてしまう。実際の株式投資では、全ての新興国市場のファミリービジネスにおける大株主(すなわち、管理している家族、家族以外の取締役、国内銀行)は、専門化のマネジャーと関わるエージェンシー問題によって恐れられるだろう。それらの株主は、したがって、ガバナンスの変化に抵抗し、企業の業績における家族以外のマネジメントの正の影響を妨げてしまう。

仮説5c:大株主の所有権(すなわち家族以外の取締役、国内銀行)と家族の所有権の集中と家族以外のマネジメントの複合的相互作用は、新興国市場における新規公開株後のファミリービジネスの業績にポジティブに影響する。

専門のマネジメントに関わる潜在的なエージェンシーコストにも関わらず、大株主は、プライベートな配当を保持するために、改善における重要な接合を乗り越えるファミリービジネスを支援するために企業統治を再形成する実行をするために未だに必要である。既存研究によると、プリンシパル―プリンシパルガバナンスのフレームワークへの専門的マネジメントの導入は、複合的なエージェンシー問題を引き起こし、ファミリービジネスの投資家は管理している家族と専門化マネジャーから私用に利用するリスクを伴う。しかしながら、実務では、家族の所有権と専門的マネジメントの共存は、企業のエージェントによって相互監視をすることを促進することで複合的なエージェンシー問題を抑えることを示している。したがって、家族以外の大株主の視点によると、ファミリービジネスの管理を完全に譲渡するために、企業価値に有害な影響を持つような家族のオーナーのために最も良い配当になることはなくなる。その代わりに、エージェンシー問題を防ぐために、管理している家族の所有権の集中を保護するためや、家族の私用を避けるための家族以外のマネジメントを取り入れることで、大株主は、ファミリービジネスが調整範囲へのマネジメントを専門化することを選ぶだろう。

これらの仮説を実証するために、新興国市場である台湾の10年間の205の記録されている企業の分析を行なった。検証結果は、全ての仮説が支持された。

この研究結果より、過度に家族がマネジメントをしているファミリービジネスでは他の大株主の緊張を増幅し、新規公開株後の段階で企業の成長を妨げるだろうことが発見された。したがって、市場統制者は、政策を発展させ、それらの摩擦を減らすためやガバナンス構造を再形成するための公的にリスト化されたファミリービジネスを促進するために測定すべきである。

新興国市場におけるファミリービジネスの環境をもとに、過度の家族管理が配当の可能性が増し、家族以外の大株主(いわゆる家族以外の取締役や国内銀行)が抑えられ、両方が企業の価値の決定をするため、企業の新規公開株後の業績へ負の影響を持つことを、この研究は説明している。家族以外の大株主の支援を得ることで、ファミリービジネスを管理している家族は、その管理をやめ、家族以外のマネジメントを採用する。この調査は新興国市場においてよりよい業績を達成するために、所有権の構造の効果的な家族の管理の中で、家族以外のマネジメントを取り込むことを志向するコーポレート・ガバナンスの再形成を有効化する。

以上より、ファミリービジネスにおいて、家族は外部の支援を要請することに好ましい影響があることが明らかになっただけでなく、銀行や家族以外のステークホルダーの複雑な関係が明らかになった。多くの家族は、家族以外の人に経営を任せることに対して懐疑的になり葛藤している。ただ、家族以外の株主はより合理的で客観的な判断に基づいて、持続的な経営をするための意思決定をするのも事実である。この研究を通して、ファミリービジネスの所有と経営における家族の役割を今一度考える契機となるだろう。

(出典)Lien, Y. C., Li, S. (2014). Professionalization of family business and performance effect, Family Business Review, 2014, 27(4), 346-364.