先日、浜松商工会議所主催の連続セミナー、大阪鋲螺卸商協同組合主催の講演で『ベンチャー型事業承継のススメ』の題目で、ベンチャー型事業承継がどのようなもので、それを具体的な実践方法やファミリービジネス特有の課題やその対策方法について、説明させて頂きました。その内容を要約してお伝えします。

そもそもベンチャー型事業承継とは?

ベンチャー型事業承継とは、若手後継者が先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をベースにリスクや障壁に果敢に立ち向かいながら新規事業、業態転換、新市場参入など新たな領域に挑戦することで永続的な経営をめざし社会に新たな価値を生み出すことを意味します。

以前は第二創業、経営革新とも言われていましたが、そのワードにはワクワク感がありません。そこで、ゼロから立ち上げる起業家「ベンチャー」でもなく先代と同じスタイルで同じ商売をする「事業承継」でもない『ベンチャー型事業承継』というなんか後継者(アトツギ)から見ても魅力的なワクワク感のあることが産み出されました。

その「ベンチャー型事業承継」という言葉も近畿経済産業局や今期の中小企業庁(経済産業省)発表の予算資料にも登場するようになりました。

 

講演内容の目次

1.ベンチャー型事業承継とは?
2.データでみるファミリービジネスの実態(強みと弱み)
3.ベンチャー型事業承継が必要な理由
4.ベンチャー型事業承継を成功させるためのポイント
[ポイント1] 企業の存続力の発揮
[ポイント2] ファミリービジネスならではの課題への対応
[ポイント3] 家業の有形無形の経営資源の活用
[ポイント4] 未来思考・強制発想による新しいビジネスの創造
[ポイント5] 前向きにやりきる力

ベンチャー型事業承継とは何かですが、先の説明の通り、起業家によるベンチャーの立ち上げでもありませんし、事業承継として先代と同じすることでもありません。ファミリービジネスの成長戦略の1つとして、後継者への代替わりのタイミングで何か新しいことをしようということで、多くの老舗と呼ばれる企業でもそのような小さなイノベーションを実施していることは良く知られています。

ファミリービジネスが最も脆弱な状況に陥るのは、事業承継のタイミングと言われており、ある研究においては、第一世代から第二世代にうまく継承される確率は30%ほどと言われています。逆にいうと、70%が倒産、廃業、M&Aなどによって、後継者への事業承継がなされないことを意味します。70%とはすごい確率と思いませんか。
現状、グローバル化やAI、IOTをはじめとした新しい技術の登場によって、ますます企業と取り巻く環境変化は激しくなっています。さらに、従来のビジネスモデルが陳腐化して、価格競争に巻きこまれ、収益がさらに悪化していくという悪循環があります。
そのような悪循環を脱するための成長戦略の1つが『ベンチャー型事業承継』となります。

ベンチャー型事業承継の成功のポイントは以前コラムでも紹介した通りです。

https://jfbmc.co.jp/wordpress/report/venkei_point5/

 

本コラムでは実際にどのような形でワーキングを実施しているのかを紹介しましょう。

ベンチャー型事業承継におけるビジネスアイディア創出の全体像

一般的な新規事業開発と近く、シーズとニーズをマッチングすることになります。

ベンチャー型事業承継のユニークなところは、企業が有する設備や技術といった一般的な経営資源だけではなく、アトツギが持つ興味・関心といったところまでも棚卸するところです。実際のワーキングではアトツギの持つ興味・関心を棚卸できるフォーマットに基づき、アトツギさんらに棚卸してもらうと、自分では気づいていなかった興味・関心までも炙り出され、意外にも熱心に取り組まれています。これはベンチャー型事業承継の成功者の事例を聞かれるなかで、自分にもそのような要素があるのではないかと思われるためではないかと思います。

そのような範囲まで含めたシーズの洗い出しをしたところで、次に市場ニーズとのマッチングを実施しますが、こちらは一般的な新規事業開発とも近いのですが、少しでも成功確率を上げるために、今後成長する分野(例えば、ヘルスケア、電気自動車、IOT、省力化など)でアイディアを出します。初めは思い浮かばないという顔をしているアトツギさんでも2時間のワーキング内でも結構いろいろなユニークなアイディアが出てきます。それぞれのアイディアに対して、他のアトツギさんからにもコメントをもらい、さらにアイディアを練っていきます。

最終的な下図のような1枚もののシートでアイディアを取りまとめてもらいます。

ビジネスアイディアの①シーズは何か、②③④ターゲット顧客のニーズは何か、⑤それらを解決するソリューションは何か、⑥その独自性や優位性は何か、⑦それを実現するために必要な投資は何かです。

当然ながら最終的な損益計算書や投資計画といったビジネスプランが必要ですが、いきなりそのようなプランを作成しても絵に描いた餅になります。重要なことは1枚もののシートでビジネスアイディアを事業コンセプト「誰に(ターゲット)」「何を(製品・商品、サービス)」「どのように(提供方法・競争優位)」を明確にすることです。

このように紙面で見える化しておけば、第三者からのアドバイスももらいやすくなります。ある程度、議論をつくして、これで行けそうだといったタイミングになってから、詳細なビジネスプラン(事業計画書)を作成すれば良いと思います。

アトツギさんや弊社のような専門家も入り、わいわいがやがやとワーキングをすれば、セミナー参加前には思いもつかなかった新しいビジネスアイディアが産まれるものです。

みなさまの活動にも是非お役立て頂ければと思います。

また、地方銀行さん、商工会議所さんからの要望を受けて、ベンチャー型事業承継を推進するためのエッセンスを盛り込んだ取引先様・会員様向けの3回程度のセミナーも企画し、実際に提供させて頂いております。そのような企画についてのお問合せはお問合せフォームよりお願いします。